画家・伊東雅江さんの「鎌倉カレンダー」2014年10月より。
鎌倉駅東口から本覚寺を通り抜け、夷堂橋を渡ると突き当りに、妙本寺の総門が見えてきます。この辺りを比企谷といい、鎌倉時代には頼朝に仕えた比企一族が屋敷を構えていました。杉木立に囲まれた参道を歩いていくと、階段の上に弁柄塗りの二天門が見えます。
平成23年、二天門の柱や梁のところどころに残っていた古い塗料をもとに修復が行われ、創建当時の色鮮やかな姿へと甦りました。正面に彫刻された荒波と二匹の龍は特に見事に浮かび上がって見えます。この龍は、かつては二、三歩後ろで手を叩くと嗚き声を上げる、と言われていたそうです。
二天門を入ると大きな祖師堂があり、広々と静かな境内では、春には桜や海棠、色鮮やかな新緑や、夏の凌霄花、晩秋になると紅葉が、折々彩りを見せてくれます。鎌倉駅から徒歩8分ほどとは思えない、自然豊かな古刹です。
<絵/文 伊東雅江>
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