画家・伊東雅江さんの2015年9月の「鎌倉カレンダー」より。
小町通りの中ほどに、鎌倉彫の作家さんがやっている鎌倉彫材料の専門店「一翠堂」があります。店内は彫りの素地となる木地が天井まで並び、ショーケースには作品や彫刻刀も飾られています。
一翠堂は、初代で鎌倉彫作家として高名な木内翠岳氏が昭和33年に創業。約65年続くお店で、現在鎌倉市内に数件ある材料店の中で、最も豊富に木地の種類が揃っているそうです。観光客で賑わう小町通りの中、店内ぱ落ち着いた雰囲気で、昔ながらの鎌倉らしい空気のあるお店です。
鎌倉彫は、源頼朝による開幕のころ中国から禅宗とともに伝わった彫漆をもとに、仏師たちが技術を習得し、仏具や飾りを作ったのがはじまりと言われています。漆を数十回塗り重ねた漆の色調と、独特の彫りの技術で表現される大胆な模様が魅力の伝統工芸です。
鎌倉生涯学習センター地下ギャラリーの展示で拝見した現在の店主である木内小夜子さんの作品は、いかにも鎌倉彫らしいい朱の鉢や、黒い不思諭な色味のモダンな大皿まで、伝統を受け継ぎながらも現代につながるような魅力的なものでした。3代目となる娘さんの若々しい作品も展示されていました。
<絵/文 伊東雅江>
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