覚園寺

画家・伊東雅江さんの「鎌倉カレンダー」2017年12月より。

鎌倉カレンダー2017年12月

大塔宮の前を左方向に曲がったあたりは、薬師堂ガ谷と呼ばれる谷戸になっていて、奥に進んだ先の石段を上がった先に、黒地蔵で知られる覚園寺があります。

苔むした道をお寺の方の案内で登ってゆくと、本堂である薬師堂が見えてきます。趣あるこの本堂は室町時代のものだそうです。

中に入ると、正面に薬師三尊坐像、その廻りには、十二支の動物を頭に乗せた十二神将や、胎内に秘仏があったという鞘阿弥陀など多くの仏像が祀られています。鞘阿弥陀は優しいお顔のお像で、近くに住んでいた作家の川端康成さんもよく参拝していたと聞きました。

本堂の中から外を眺めると、花頭窓が額縁となり、一幅の絵のような美しい景色です。3万坪あるという境内には、南関東で一番の高さを誇る27mのモミの木や、樹齢800年のイヌマキ、本堂裏には大きなメタセコイヤの大木が時期になると美しく紅葉します。豊かな自然が大切に保存されていることに感銘を受けました。伺った初冬の時期にはイチョウの葉が一面に散った黄葉の絨毯と、緑の苔に映える赤いイロハモミジが鮮やかなコントラストを描いていました。

覚園寺の駐車場の立て札の隣には、「ネコ飛び出し注意」という小ぶりな立て札が並んでいました。近所の方の設置意向にお寺が賛同して立てられたそうです。小さな命を思いやる一文に優しい気持ちを頂きました。

<絵/文 伊東雅江>

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