萬屋本店

画家・伊東雅江さんの「鎌倉カレンダー」2018年10月より。

鎌倉カレンダー2018年10月

長谷観音の門前を通る長谷大通りに、古くから軒(のき)を連ねる数軒の店舗。その中にひとつ萬屋本店が、昨年新たにレストラン・結婚式場として開店しました。

萬屋本店の創業は1806年(文化3年)の江戸時代。日用品、雑貨、調味料等を扱うお店でしたが、5代目当主惣左衛門の時に、遠く兵庫は灘にある小西酒造の清酒“白雪”を鎌倉で販売、関東で始めて白雪を扱う酒問屋になりました。

現在の建物は大正14年建築。内部は改装されながらもほとんどが昔のままの状態で、萬屋さんの歴史が感じられます。天井の高い入口から中に入ると土間で、設えられた小上がりには、神棚・大きな金庫・酒造から発行された酒の販売許可証の木札、棚には秤・陶器の樽・徳利など、酒問屋の時代に使われていた道具をはじめ、小上がりの火鉢の灰なども当時のままだそうです。また住居だった2階では、欄間や窓ガラス、松・杉・黒檀が使われた意匠を凝らした床の間なども昔のもの。酒問屋の時代にはトロッコで通りまで荷物を運んでいたという裏手にある蔵は、こちらもきちんと保存され、誓いの儀式を行う大切な場所として使われていました。

外観は大きな暖簾が印象的で、古い建物を活かし景観に配慮した素敵な店構えです。

<絵/文 伊東雅江>

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