画家・伊東雅江さんの「鎌倉カレンダー」2017年9月より。

江ノ電長谷駅から海に向かうと右手に極楽寺坂があり、その坂の手前、虚空蔵堂の下に鎌倉十井のひとつめに挙げられる星の井があります。星の井も昔話を持つ鎌倉名所です。
昔、極楽寺坂を降りたあたりは昼間でも山陰で暗い場所でした。坂をおりたところには中を覗くと昼でもなぜか星が映りキラキラと光って見える不思議な井戸がありました。ある日、漁師の女房がこの井戸のそばで魚を料理していると魚があばれ、包丁を井戸へ落としてしまうことがあり、それ以後なぜか星は見えなくなってしまったそうです。
旧鎌倉町の町章であり鎌倉の枕言葉“星月夜”の由来でもあり、星月の井、星月夜の井などとも言われる井戸に伝わるお話は、星が見えたと言う昔の人の想像力の豊かさと星の井という名前が美しいと思います。また、漁師の女房が魚を料理していた包丁が原因というのが海の町鎌倉らしいと思っています。中を覗いてみたいと思うのですが、今は蓋がかぶせてあり井戸を覗くことができないので、残念でした。
<絵/文 伊東雅江>
コメント