画家・伊東雅江さんの「鎌倉カレンダー」2018年7月より。

北鎌倉駅から10分ほどの場所にある浄智寺、その参道の脇の道を登った先に、日本画家の小倉遊亀さんや小津安二郎監督なども暮らした、鎌倉らしい静かな一帯があります。そこからさらに奥「たからの庭」と記された看板の先の踏み石を進むと、煉瓦の煙突がある古民家が見えてきました。
趣きある雰囲気にわくわくしながら中へ入ると、その日は和菓子教室が行われていました。お庭の奥に見える小屋には陶芸の薪窯があり、陶芸教室も開催されています。
ここは昭和初期に陶芸家 久松昌子さんが窯を築き、多くの作品を制作していた場所です。外国からの注文も多く、画家の藤田嗣治氏がフランス風ディナーセットを依頼に訪れたこともあったそうです。戦争中にはエリアナ・パヴロワの弟子で、日本バレエの創始者の一人とも言われる東勇作氏のバレエ教室が開催されていたこともありました。
現在は、この数百坪の谷戸の古民家を鎌倉古民家バンクが借りて維持保存しながら、「北鎌倉たからの庭」というシェアアトリエハウスとして、文化やアートの発祥の場所になっています。
「たからの庭」という名の由来は、浄智寺さんの山号「金宝山」から宝の字を頂いて名付けたそうです。緑に囲まれゆったりとした空気の流れるところでした。
<絵/文 伊東雅江>
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