明王院 初不動

画家・伊東雅江さんの「鎌倉カレンダー」2013年1月より。

鎌倉カレンダー2013年1月

鎌倉のいちばん東、十二所(じゅうにそ)にある明王院は、鎌倉時代に将軍が直接創建したという格式ある真言宗のお寺です。鎌倉駅から大刀洗行きのバスに乗り、泉水橋で下車。進行方向にある泉水橋をわたり、左に金沢に通じる旧道を行き、ニツ橋という小さな橋を渡ると山すそに静かに建っています。まだ寒さ厳しい1月の28日 に、明王院の初不動にうかがいました。初不動は、その年最初の不動明王さまのご縁日に行われる法要です。

ニツ橋を渡ると山門に紅白の幕が下り、すでに多くの人でにぎわっていました。境内では、お揃いの白い上衣を着たご婦人たちが、暦や梅干しなどを並べた露店を出していました。この梅干しはご住職の奥様が境内の梅をつけたもので、手書きのラベルが貼ってあります。手作り感に惹かれて梅干を2つと鳥の小さな木彫守を求めてから、本堂へ上がりました。

本堂の天井には菊が描かれ、6人のお坊様が観音経を読経なさり、護摩が焚かれていました。太鼓のリズムにあわせて、幸せと安寧を願う言葉が唱えられる中、一人に一つ小さな護摩木が配られます。護摩木に厄を移して順番にお坊様へお渡しすると、祈念を込めて護摩の火で焚き上げてくださいます。

法要が終わった後、参拝者におふるまいがあり、列に並んで、油揚げと葱の入った暖かいお蕎麦をご馳走になりました。ご近所の方がてきぱきとお蕎麦を準備される姿が印象的で、皆さんが協力して趣きあるお寺や法要を守っておられることが感じられました。帰りがけに山門を出て振り返ると、門柱に掲げられた青竹の花活けには水仙と蕾が付いた梅の枝が生けてあり、やさしい心遣いが感じられる素敵なお寺でした。

<絵/文 伊東雅江>

コメント

タイトルとURLをコピーしました