安寧(円覚寺境内 如意庵)

画家・伊東雅江さんの「鎌倉カレンダー」2018年9月より。

鎌倉カレンダー2018年9月

円覚寺の中にいくつもの塔頭(たっちゅう)があり、如意庵はその一つです。総門をくぐってまっすぐに進むと緩やかな坂の右手に“如意庵”と記された石碑が立っており、その横の石段を登ると本堂があります。こちらの一角では、ご住職の奥さまが「安寧」という茶寮を営まれています。

石段の下には、苔むした石垣に“安寧”と小さな木札がかけられ、アンティークな椅子の上に柿の小枝とお品書きが置かれています。石段を登って中に入ると、葭戸に京うちわが置かれ、京都の夏のような涼しげな風情です。静かなお庭が見える席につき、あんみつを注文しました。

奥さまにお話を伺うと「欲のない花や小鳥の囀ずりを聞いて、のんびりと自分を愛でる場所になれば」との思いで安寧をはじめたそうで、東京から赤ちゃんを抱いて来る若いママもいるそうです。

運ばれてきたあんみつは、黒いお盆の上に、作りたての柔らかい白玉や赤えんどう豆、京都のお抹茶をいれた緑色の寒天、杏子、皆心尽しの手作りが美しく並んでいます。残暑の中ほっと一息、ひんやりと甘く美味しいあんみつと、素敵な時間を頂きました。

<絵/文 伊東雅江>

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