三河屋本店 鎌倉市景観重要建築物等第22号 国登録有形文化財

画家・伊東雅江さんの「鎌倉カレンダー」2013年11月より。

鎌倉カレンダー2013年11月

若宮大路の八幡宮近くの沿道にある三河屋本店は、明治33年創業の酒屋さんで、現在の建物は昭和2年に建てられました。段葛から見ると屋根が二重になっているように見える出桁(だしげた)造りという店構えで、熱くて大きな板の梁に“三河屋”の看板が掛かっています。店の脇には二本のレールがあって、トロッコへ荷物を載せて裏にある土蔵へ今でも運んでいるそうです。漆喰壁の蔵は、今では少なくなっている職人さんが漆喰を塗るのに半年もかかった大きなものでした。

店の中には昔のままの帳場や大きな金庫、のれん、“八幡前 三河屋”と書いてあるいろいろな大きさの酒瓶がありました。昔は店の中の大きな樽から酒瓶に入れてお酒を売ったそうです。大きなのれんはお酒を絞った麻布で作ったもので、屋号の入山十一(イリヤマジュウイチ)の紋が縫い付けてあります。この紋は、横浜の大店 野澤屋さんにあやかって、野澤屋屋号「入九(イリク)」に商売が繁盛するよう2を足し、入山十一にしたそうです。

場所柄、文士や著名人のお得意様も多く、近くの大佛次郎邸や雪ノ下の小林秀雄邸、川喜多邸に、ジンやウィスキーといったお酒や缶詰、チーズなどをお届けしたというお話でした。

<絵/文 伊東雅江>

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